樹海の取材を見て
何ヶ月に一回程度の割合で、樹海で自殺志願者にテレビ関係者が突撃取材をし、自殺を思いとどまらせるような切り口の番組を見ることがある。
あれは一体何なのだろう?
下請けの製作会社のスタッフとおぼしき人物が、樹海付近のバス停辺りで張り込み、その場所には不釣り合いな背広姿のサラリーマン風の人や、所在なげにグルグル歩き回る人を見つけるとロックオンし、最終的にはインタビューを取る。
何故、自殺する気になったのか?
その辺りの事を聞き出そうとするのだが、番組を見ている視聴者に詳しい話や背景が明らかになることはない。
そして、何とか一旦は自殺を思いとどまらせる。
駅まで送り、番組は終わる。
しかし、私は思わずにはいられない。「出演料、取材協力費はちゃんと払われたのかな?」と。
せめて数日間、その人が人間らしく生きられるだけの額が与えられたのかな?と。
最近見た番組は特に酷かった。
派遣切りされ、行き場を失った男性が出ていた。
局側の誘導により、実家へ助けを求める電話をするのだが、電話に出た後妻らしき女性のけんもほろろなこと。
死にかけている先妻の子供に手を差し伸べることはなかった。
あたかも自分がそうであったかのように、「食べるためになんだってしなければダメなんだよ」と突き放した。
実家で他人が父と再婚すれば、実家は実家ではなくなる。
樹海まで落ちる人の多くは、自分自身ではコントロールできないことで運命が暗転していくものなのかもしれない。
一つでもセーフティネットがあれば落ちないで済むものを、ある人は幾重ものセーフティネットを張り、ある人は持っていない。
その中には家族愛という名のセーフティネットもあるだろうに。
自分の子供をセーフティネットとしている親だっているのに。
この自殺を一旦中止した男性はどこへ行くのだろう?
実に残酷な仕打ちである。
世間で打ちのめされ、樹海へ来てもテレビ局の気まぐれで打ちのめされる。
生きていても良いことがない・・・。
そういう人生もあるのだと思った。
それをテレビを通して世間に晒し、見せ物にするだけで終わるテレビ局。
「次はお前かもしれないよ」
ジャーナリスト面して人の心に土足で入るマスメディア、結局は金のために動くモラルなき業界に、私は心の中で毒づいてみる。
テレビ局もただ無責任に垂れ流すだけで良いのだろうか。
そこに人情はないのだろうか。
放送を見た人々がどう思うが、自分たちはどう思われるのか、などなど、お構いなしの無能で無神経な番組には毎度の事ながら呆れるものだ。
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